記憶の限界

お盆だと言うのに私は大病のせいでかなり弱ってきた、「おい、ヒッツジ(執事)そこのフランス窓を閉めてくれ、少し寒い、ペチカに蒔をくべてくれ、ヒノキの薪だぞ、」私の記憶もだんだんうすらいてきた、記憶が前後、左右ばらばらになっておる、よーく考え途切れ途切れの記憶を繋いで繋いでやっと書いておるのじゃ、時間の観念などは一向に気にしなくてもいい、この話はおじいちゃんの話だから。
ミキという子も、マコという子も不幸な生活をしておった、店のお給料は月2回に分かれておった、1日と16日というぐわいじゃ、その日になると彼女たちの幼い弟、妹が営業中にやってきて、お姉ちゃんの給料をもらいにきおった、これがそのときの庶民の暮らしじゃ、また彼女たちホステスさんの意外な一面もわしゃみてきた、たしか節文の日だったと思うが水商売の店ではその日、仮想大会をおこなうのじゃ、それがオバケといっていまでもやっておるそうじゃ、ホステスさんは皆思いおもいの衣装を仮想し、顔のメークもオカメにしたり、バケモノにしたりしておおはしゃぎするのじゃ、その日はたのしそうじゃった、また季節は忘れたが皆で遊園地に行ったことがあった、女7〜8人、男私とナカホドさん二人、遊園地で大はしゃぎ、幼い一面も見たものじゃ。
耳のそばでガサゴソ音がする、何かなと思って目をさますと、人が私の寝ている上を歩いていく、横をむくとミキちゃんが大の字で寝ている、「あーまたやったー」、扇町公園で寝ていたのだ、通勤客が横を通っていくのだ、そのときミキちゃんが目をさまし、寝たままで「ぼく〜ん、しってた、マコ、ナカホドさんと同棲してるんよー」「えーーーーーっ」